
第15回せんがわ劇場演劇コンクール受賞者コメント【俳優賞】山口真由(7度『いつか来る、わたしの埋葬のためのレクチャー』)

コンクールに参加してみての全体の感想や印象はいかがでしたか。
上演に限らず、自分たちの活動を振り返ったり、ことばにする機会を、多くいただいたなと思います。
特に専門審査員・公募審査員によるアフターディスカッションは、とても豊かな時間でした。
実はどんなことを聞かれるんだろうとドキドキしていたのですが、みなさん朗らかに交流してくださり、審査員の方々どうしでも話が弾んでいきました。
自分たちの公演でも、アフタートークで意見交換会の時間を設けることはあったのですが、よりフランクに、口々に感想を言っていただくという空気があった気がします。わたしたちも、「即座に応答しなきゃ」とか焦らずにいられる雰囲気で、少しずつ言葉にしていけるゆとりがあったので、いろんなお話ができました。
当日のディスカッションの中でも話にのぼったのですが、抽象的ですが「こういう鍵をもっている人には、こういうふうに見えて、ああいう鍵を持っている人には、ああいうふうに見える」といいなあと思っています。その中でも、「これは届くといいなあ~」という想いも詰め込んでいるのですが、それはいつも、小ビンに入れた手紙を海に流すような気持ちで放っていて。そうした裏側のことごとを、ひとつひとつ、ひもとくようにお話しできる機会はなかなかないと思いました。
俳優としてのこだわりを教えてください。
「どうしたら、嘘じゃないのか」を大事にしたいと思っています。
俳優が、自分がしゃべっている台詞にだまされたり、台詞をしゃべっている自分にだまされることって意外と少なくない、と思っていて。
実生活でも俳優に限らず、心から「嘘じゃない」って思っていることが、後々「実は嘘だったのかな。。」ってふっと気づくこともありますし、ジャッジは難しくはあるんですが。さらには「嘘じゃないあり方」って人の数だけあるんだろうと思うので、ひとまず現時点でわたしにできること、に限られてしまうのですが、できるだけ、ほんとうであることを目指しています。
俳優賞受賞の感想をお聞かせください。
素直な気持ちとして、嬉しかったです。それから、とてもありがたく思いました。
わたしはめちゃくちゃ不器用で、何もできないところから始めていて、ナチュラルに最初の自分であるだけでは、舞台に立ち続けることができなかったタイプだと思います。
「わたしの身体はこんなところにあったのか…?」みたいな、びっくりするほど不器用な経験が何度もあって、そのプロセスでいろんな方々が拾い集めてくれた欠片だったり、練り上げてくれたものでできている部分がわたしの中には確実にあります。あきらめないで関わってくださった方々に、ひとつの報告ができた気がして、ありがとうございます、と思いました。
もっとも7度の舞台は、「人間が目立つ」ように演出されていっていると感じますし、照明さん・音響さんが、物語から独立した強度をもって空間や人間を立ち上げていってくれるので、それが演者を何倍増しでみせてくださっているということは、確実にあります。
照明さん・音響さんにつきましては、舞台上で呼吸を感じるくらいの距離に存在を感じます。なのでお二方が「ここだっ」ってめがけるところに、いつもなんとか追いつきたいと思っています。その中で、作品を届ける「何か」になれたなら嬉しいです。
コンクールに出場してよかったこと、大変だったことを教えてください。
7度の公演は、いつもオリジナルではなく、いわゆる既存の戯曲やテクストを上演しています。
それが何十年、場合によっては何千年の時を経てきていることばですので、今回、オリジナル作品を上演するにあたり、自分から出てくることばを舞台にのせるおそろしさ、ということを改めて考えました。
どう思われるんだろうと思って怖い、というのではなく、何をもってのぞめば、共演いただいた鄭さんにしゃべってもらうとか、伊藤さんに演出してもらうとか、スタッフさんに手を貸してもらうことがゆるされるんだろう、という重さのようなことを、すごく実感しました。
そんな作品づくりができたことは、とても大きな経験だったと思っています。
大変だったのはそのことと、あと、いかにタイムオーバーしないか、です。
実はテクリハでの通し稽古まで、制限時間の40分を結構大幅に超えていまして、運営の方に「超えちゃうと審査対象外になります」とお言葉いただいたりしていましたので、制限時間!厳守!ということに、何より緊張しました。
本番は無事にクリアすることができ、ほっとしました。
今後の活動の抱負を教えてください。
初めての方に「どんなお芝居やってるの?」と聞かれたとき、なかなか一言で答えられないなといつも思っていまして…
それで、よし、何とか語れるようになろうと思って。近年はことばを探して、劇評の執筆にもトライしています。7度でオリジナル戯曲を上演できたことを糧に、今後もどんどん、多角的に演劇に取り組んでいきたいです。
この間、友人が「『職業:山口真由』になったらいいんじゃない?」と言ってくれたので、わたしにできる唯一無二を目指してがんばります!
それから、「演劇で世界を変えたいっ」と、ひそかにずっと思っています。
どーん!としたことではなくて、ここで上演があって、それがバタフライエフェクト的に、数年先の世界をちょっと変えるみたいな。
そんな希望を抱いています。
7度の活動としては、昨年から「無名なるわたしの文化史」と銘打った企画をやっています。
いちど、めいっぱい「ふりかえる」ことを大事にしようと話しまして。1990年代~2010年代という時代を、上演と、いろんな分野の方のトークで振り返っていくという枠組みです。
その中から何を拾い上げることができるか。もちろん来年の受賞公演に向けて邁進していきますが、こちらもぜひ、気にしていていただけたら嬉しいです。

7度
山口真由