調布の“場”レポート① POSTO
カフェなのに注文しなくてOK!?
仙川駅から徒歩2分ほど、郵便局の向かいに立つPOSTOは、カフェのようでありながら、注文や飲食をしなくてもOK。
色んなお店や人が出入りし、色んな出来事が起こる少し不思議なこの場所について、お話を伺ってきました。

オーナーの田中東朗さんにお話を聞きました
POSTOってどんな場所?
――ここは基本的にはカフェですが、注文の義務はありません。ルールは「自由に入っていい」「何もしなくてもいい」ということだけです。
また、ここで商売をやりたい人に曜日を決めてお店を出してもらっています。今日はカレー屋さんですけど、すごく美味しいですよ。
花屋、八百屋、パン屋…いろんな人に出店してもらって、ここを旅立って自分のお店を出した人もいます。
他にも、一日100円で使えるDIYスペースがあったり、赤ちゃんの一時預かりをやっていたり、演劇をやることもあります。奥のスペースでは夕方から僕が教える学習塾もやっています。
僕は基本毎日ここにいて、学習塾の時間以外は来た人と話しています。


この場所を開くきっかけ
――2023年まで5年ほど緑ヶ丘で「ほんのもり」という私設図書館のような場所をやっていたんですが、その活動を見て「仙川でも何かやってみないか」と今の大家さんに誘ってもらったことがここを始めたきっかけです。POSTOは、ほんのもりでやっていたことやシステムを引き継いでいます。
ほんのもりは自分たちの居間を解放するみたいな感じで、開いている時間は自由に入っていいっていう場所だったんですが、図書館といっても、本を読みに来る人ばかりではなく、喋ってる人や遊んでる人も多かったですね。
POSTOでもその雰囲気は続いていて、例えば僕も入っているキャッチボール部っていうのがあって、さっきは50代と30代と20代の男性と女性がグローブ持って公園に出かけていきました。僕も行きたかったな(笑)
大人も子供も遊んだ方がいいよねっていうか、そもそも人って遊ぶために生きているわけで。
なんかしたいねっていうことが起きる、起きうる場所を守っていきたい気持ちは「ほんのもり」の時から変わらずあります。
運営について
――この場所は大家さんに家賃を払って借りています。出店している人の売上の一部を入れてもらって収入源にしていますが、すべて家賃に充ててギリギリやっていけています。
ちなみに机や椅子など、ここにあるものはほぼ全部貰い物です。

運営面に限らずこの場所の一番基本的なところは、僕が来た人と一対一で個人的に喋ること。
やりたいことがある人については、その人のやりたいことや話を聞くなかで、ここでやった方がいいのか、ここじゃない方がいいのか、その人と僕とで考えていけば、そんなに変なことにはならないと思っています。
どんな人が来る?これから利用してほしい人は?
――今は20代後半~30代の小さいお子さんのいるお母さんが特に多いですね。それとは別に、毎朝来るおじいさんとかもいますが。
利用してほしい人…。
こういう場所ってやる人の色が出るもので、どんな人がいるからどういう活動が生まれるかっていうのが変わってくるじゃないですか。なので、僕と同じような20~30代で、企業などに属していない人の、今の社会での感覚っていうか、居どころのない感じが、この場所の1番テーマになる部分ではあります。
町全体を見渡しても、やっぱり飲食店中心にチェーンや大型資本に呑まれていく流れがありますよね。そこにどう抗えるかっていうことを考えた時、個人が自分の生活とかその人生をかけて立つような店をやってみようっていう人を1個1個応援していきたい想いがあります。
まあ、それはこっちが勝手に思っているだけで、やる人は自由にやってねっていう感じですけどね。
これからどんなことがしてみたい?
――毎日暇だった約4年前のオープン時に比べて、現在はほぼ毎日何かしらやっている場所になれているので、右肩上がりっていう感じで満足しています。
この場所があって、僕がいる限りは当分このままやっていきたいです。
改善するとしたら、自分の飲み物づくりのレパートリーをもうちょっと頑張って増やしたいくらいかな(笑)

この場所で大切にしていること
――最近は行政がコミュニティスペースを仕掛けることも多いし、ここもよく「コミュニティスペース」というくくりをされるのですが、ここはそういった社会に必要な場所としてシステム的に運営される場所とは違うと思っていて。
この場所は基本的に僕がここにいることで成り立つごく個人的な場所。
ツォモリリ文庫(※)のオカズくん(=浜尾和徳さん)やあきこさん(=おおくにあきこさん)なんかもそうですけど、その場所にいる人の理想とか、 夢見てること、やりたいこと、狙ってることがあって、そこで何かプロジェクトを展開していく場所でありたい。そういう場所が数多く生活圏にあれば、日々が楽しくなると思うんです。生活の中に遊びが生まれるっていうか。
それと、僕は自分からは「コミュニティスペース」を名乗りたくないんです。
例えば、赤ちゃんが来て、おばあちゃんが来て、「ちゃんと世代が交流しているな、よしよし」みたいな見方をその人たちに対してしたくない。僕は全員名前がある○○さんとして見ているわけで、その人と自分との歴史っていうのがある中で、この場所が使われているっていうことだけがあればいいと思っています。

田中さんはその全員にあいさつし、話しかけ、見送っていた。
※ツォモリリ文庫…仙川にあるギャラリースペース。オーナーの浜尾さん&おおくにさんのインタビュー記録はこちら
調布のおすすめスポット
――どこかあるかな…ほんとに毎日ここにしかいないから(笑)
ツォモリリ文庫は近くてオカズくんとも知り合いなのでよく行きます。
せんがわ劇場はそんなに行かないけど、演劇が好きなので。演劇コンクールの市民審査員もやりました。
それと、緑が丘は自然があって良いですね。神代団地のすり鉢公園も。グラウンドや空き地にキャッチボールやミット打ちをしに行きます。
オープン情報・アクセス
営業時間:8:00~20:00(水曜日は9:00~15:00)
定休日:火曜日
住所:〒182-0002 東京都調布市仙川町1丁目19−10