調布の“場”レポート③ TEGAMISHA ART GALLERY
国領駅から歩いて3分、「東京蚤の市」などのイベントや、市内の店舗でも馴染み深い手紙社によるアートギャラリーが、2024年春にオープンしました。ギャラリーの生まれた経緯やどんな場所を目指しているのか、お話を伺いました。

ギャラリー責任者の小池伊欧里さんにお話を聞きました
ここはどんな場所?
――まず、手紙社が大切にしているのは、自分たちが素敵だと思った作り手、作家を伝えていくこと。その素晴らしさをどういう形で伝えていくかというところが、手紙社のイベントであり、それぞれの店舗であり、雑誌などの出版物であり、このギャラリーで行う展覧会でもあります。
ここは手紙社の新しいチャレンジの1つとして今年(2024年)4月にできたばかりのギャラリーで、今の展覧会で6~7本目くらいですかね。
より身近にアートを楽しみ、気軽に家に飾ってほしい、という思いを込めて、手紙社なりのアートの世界を提案しています。

この場所を開くきっかけ
――私はギャラリーを担当する前は「東京蚤の市」などのイベント事業をやっていたんですが、手紙社は元々「もみじ市」というクラフト系のイベントから始まった会社なので、クラフト作家や、 イラストレーターさんと仕事をすることが多いんです。
そうした中で、 クラフトとかイラストレーションと、アートの境目ってなんなんだろうねっていう話はずっと出てきていて。
例えばイラストレーションは、 依頼に対する「仕事」としてアウトプットされるものとする見方がありますよね。でもそれだけじゃなくて、イラストレーターと言いながらもアーティスティックな作風の人もいるし、実際に受注的な仕事はしなくなって、アーティストとして自身の制作活動にシフトする人も増えてきています。
クラフトはクラフトで、器など道具の1つとして見られることもありますが、オブジェを作る方も多いですし、特に木彫だと、クラフトとアートの差ってなんだろうっていうところもあって、これはもうアートって言ってもいいよね、みたいなパターンが出てくる。
うちの代表も含め、手紙社と長く一緒にやってきた作家さんたちが、 アートシーンに片足を踏み入れてるんじゃないかっていう思いは持っていました。
そういう作家さんたちの展示の場というか、手紙社として「こんなアートの表現もあるよ」っていうのを見せられるとしたら、それは自分たちでギャラリーの名前でやっていくのがいいんじゃないかというのが、ギャラリーをオープンするきっかけになりました。

それともう1つ、私はもともと美術雑誌の出版社で10年ほど働いていて、ファインアートの世界に身を置いていたんですが、どこか閉塞感を感じていて。アートを取り巻くコミュニティがもっと開かれればいいのに、という思いがずっとあったんですね。
例えば私も40代ですけど、同年代の人たちの中で、一度でも絵をギャラリーとかで購入して家に飾ったことがある人いますか、って聞いた時に、果たして何人手が上がるだろうなって…。それはちょっと寂しいし、少しでもアートを買って飾るようなカルチャーを広げて行きたい。
そこの裾野が広がらないと、アート業界全体もこれ以上育っていかない気がするし、そこを耕していくことはやっぱり大切なことだと思います。
手紙社のファン層には「なにか素敵なもの」「かわいいもの」を入口にして、アート寄りのものにすごく感度の高いアートファンの予備軍がたくさんいると思うんですよ。 まずはそういう人たちに、もっと気軽にアートと出会ってもらう場にしたいですね。
運営について
――「goodroom residence 調布国領」1階のテナントとして「TEGAMISHA ART GALLERY」とカフェ「TEGAMISHA TERRACE」が入っています。
ギャラリーの内装やカフェのしつらえなどは手紙社ですべて設計しました。もともと寮だった建物なので、カフェの屋外デッキのところなんかはがっちりと生け垣に囲まれちゃってたんです。
展示作家さんの選定や調整は僕が1人でやっています。
運営に関しては、もう少し売り上げを伸ばしたいなっていうのはありますね。
手紙社全体で見るとイベントをはじめ色々な事業をやっていますが、それぞれの店舗として結果を出していかないと、あまりやってる意味もないし、何より売れないと作家さんに申し訳ないので。 とにかく作品をたくさんの人に買ってもらいたいです。

どんな人が来る?これから利用してほしい人は?
――作家さんによってお客さんの雰囲気も変わっていくのが面白いです。作家さん目当ての方がついでにカフェに寄ってくれる場合もあれば、カフェのついでにギャラリーを見ていってくださる方が多いときもあります。
これから利用してほしい人は、まだアートを買ったことがない人と、地域の人ですね。
例えば、青山とか銀座にあるギャラリーって、親子連れでなかなかフランクに入りづらい感じがある。ここはベビーカーで来てくれたりとか、散歩中のご夫婦が入ってきてくれたりとかもあります。
地域の方たちがふらっと入ってくれるような雰囲気も目指しているし、大切にしていきたいですね。
これからどんなことがしてみたい?
――まだ始まったばかりの場所なので、まずはキュレーションを通して、手紙社のテイストをこちらから提案していかないといけないと思っています。
それと、今の展覧会では作家さんのアイデアでコンサートとライブペインティングをしたのですが、今後も何かしら会期の途中でやりたいなって思っています。

この場所で大切にしていること
――「なんか気持ちがいい」と思ってもらえる空間にしたい。
涼みに来たり、ふらっと立ち寄ってアートと出会ったり。買うまで至らなくても、その人の生活のなかに馴染んでほしいです。
調布のおすすめスポット
――鬼太郎公園とか野川沿いとかですかね。自然を眺めながら散歩するのが好きです。

オープン情報・アクセス
営業時間:12:00〜18:00
定休日:毎週月・火曜日、年末年始 ※祝日の場合は営業(振替休業あり)
住所:〒182-0022 東京都調布市国領町2-12-19 goodroom residence 調布国領1F