―まずはコンクール全体の感想をお聞かせください。
第12回せんがわ劇場演劇コンクール受賞者インタビュー(5) 俳優賞 瀧澤綾音さん(ほしぷろ)
滝澤絢音(以下「滝澤」) すごく丁寧に対応してくださった印象があります。下見から1時間以上丁寧に案内してもらえたり、空間を感じる時間をいただけたり、本番までもテクリハ、ゲネ、本番とたくさん舞台を使わせてもらえてよかったです。
私は参加できなかったのですが、アフター・ディスカッションでの交流などもとてもいいなと思いました。テーマの「出会い」にとても沿っているなと。テーマ「出会い」だからと、エリア51と稽古場での交流もし、楽しませていただきました。欲を言えば他の参加者の方ともっと「出会い」たかったな、とも思います。
―コロナの影響がやはりあって、どうしても制限せざることも多くなってしまいましたが、全体的に参加団体同士は和やかだった印象がありますね。実際に、俳優賞を受賞してみて、いかがですか?
滝澤 実感はないんですけど、みんなでいただいた賞ですので嬉しかったです。どこからの目線だよって感じですが、審査員の方々は、私がやった「セリフを一言しか喋らない俳優」に、賞をくれるなんてすごいなと思いました(笑)。
私たちの作品は自分達の良いところを最大限出そうということで、創作を行いました。初めましてのメンバーと、創作を始めるとき得意なことや“なめとこ”でやりたいことを共有して。私は「喋りたくない、無用なものになりたい、あるがままにただ存在したい」という思いを伝えていたのですが、それを役に反映してもらったと思います。
メンバーそれぞれが活かされた作品を、審査員のみなさんが受け取ってくださって、「それぞれの人間を活かすことってやっぱりいいよね」という気持ちに賛同してもらったような気がして嬉しかったです。
―実際に台詞がほぼない中で、ものすごく心を動かされる瞬間がありました。素晴らしかったと思います。ただ、本番、トラブルもあったようで、作品を終えた直後にとても悔しがっている姿を拝見しました。あれは、何に対しての悔しさだったのですか?
滝澤 予定していた電飾が、光らなかったというトラブルがありました。その景色をお客さんと共有したい思いが強かったので悔しかったです。メンバーみんなも同じように悔しがっていて。私は悔しいながらも「みんなこのシーンを大切に思っていてくれたのだな」と、主体的に臨んでいてくれたみなさんへ尊敬と嬉しさを感じました。
―ドラも、(もう一人の出演者の)星さんが手で叩いていましたよね?ゲネプロではバチで叩いていたようですが。
滝澤 本番前に星さんに「こんなところにバチ置いてたら本番忘れるんじゃないの〜」と冗談めかしてみんなでわいわい言っていたら、本当に忘れていてびっくりしました(笑)。せんがわでの本番の前に、福島県西会津の六斎市で、作品を野外で披露したり、日々の創作で即興的に常に変化がありながら作ってきたので、バチがなくても何も問題なくおもしろがっていました。
―でも、実際は忘れていただけと。
滝澤 そうなんです。(笑)
ただ、電飾の光景を共有できなかったという悔しさもあって、今後も今回の作品を披露していく運びになっています。そう思うと、それはそれでよかったのかなと。
―またやるかもしれないのですか。それは楽しみですね。そのようなトラブルに見舞われて、上演中、精神的に影響などはありましたか?
滝澤 まあ舞台上にいたらやり切るしかないので。飴屋法水さんに言われた「あることをないことにしない」というのを私は大切にしていて、つかなかった電飾は、つけにいくという手にしてしまったり、悔しいと思った気持ちは、その後のシーンに利用できると思ったので、その気持ちを乗せて、人2(星さん)を睨みつけるなどしました。
―なるほど。作品を仕上げるにあたって、特にこだわって力を入れていたのはどんなことですか?
滝澤 まあ全部っちゃ全部なのですが(笑)。コミュニケーションですかね。ほとんど初めましてのところからメンバーとの創作が始まったのでコミュニケーションを大切に、それぞれの良い部分を出せるようにということに力を注いでいました。構成台本は演出の星さんが作ってくださったのですが、作品をよくするために疑問はしっかりと伝え意見を交換し合って作品に立ち上げていきました。今回のメンバーは肯定的に色んなことをおもしろがったり、細やかに感謝してくれたり、主体的に創作に臨んでいる方々で。信頼関係が築いていけたので、安心して創作や演じることに大きく挑戦できました。
―実際作品の内容を理解するのには難しい部分もありましたが、メンバーの思いが塊となって客席に届いているような印象はありました。普段から、いわゆるドラマと呼ばれるようなものでなく、このような構成の作品に出ることに慣れていらっしゃるのでしょうか?
滝澤 私はそういう作品が好きなので多いですね。この1〜2年は言葉がないものや、身体を使うものが多くなっていました。身体でやっていたこととしては昔新体操をやっていたり、コンテンポラリーダンスや暗黒舞踏に近いようなものなどにも触れ、ヨガも勉強してきました。
―なるほど。今後の活動の展望をお聞かせください。
滝澤 ほしぷろで今回の作品を今後野外とか色んな場所で出せたらいいねと話しています。個人としてはインスタレーションが好きなので、自分で作品を作りたいと思っています。映像や写真も自分で撮っていて、パフォーマンスや映像などを組み合わせた作品などもつくりたいと思っています。既に自分で「あるがままを愛するために」というプロジェクトをやっています。名前を言うのが恥ずかしいんですけど(笑)自分にとって大切な生きる主題です。
―ぜひチェックしてみます(https://www.takizawaayane.com/project)。最後に何か伝えたいことがあればどうぞ。
滝澤 私みたいにすごくゴツゴツした人間に賞を与えてくださってありがとうございます。それが誰かの希望になったら嬉しいです。私はできないこともとても多い人間ですが、その人の良いところをより輝かせていったら、伝わるものもあるのだなあと学びになりました。今まで色々な場所で、辛いことや、否定されたことなどもたくさんあり、思い悩んでいた時期もありましたが、今回の作品のように自分の良いところを出していったら、誰かに伝わることもあるし、賞をいただけて、少しだけ、続けていてもよかったのかなあと思えました。
―本当に素敵なお話をありがとうございます。ぜひ、今後とも好きなことを続けていってください。応援しています。
滝澤 こちらこそありがとうございます。ゆっくりやっていきます。
インタビュー・文 一宮周平(第12回演劇コンクール運営チーム)
