令和５年度　調布市民歌舞伎公演

内容

一　新版歌祭分(しんぱんうたざいもん）　「野崎村（のざきむら）」一幕

　近松半二作、お染久松の心中事件を題材にしています。
　大坂瓦屋町の油屋に奉公に出ていた久松は、身に覚えのない横領の罪を着せられ野崎村に戻されてきます。そこで久松は、久松と娘のお光の祝言を挙げることにし、お光が大喜びで支度をしていると、大坂から久松を追って油屋の娘お染がやってきます。美しいお染に嫉妬して家に入れまいとするお光。しかしお染は外から懸命に久松に合図を送り、二人きりになったところで久松をかきくどき、一緒になれなければ死ぬと迫ります。二人が心中するつもりだと察したお光は髪を切って尼になり、久松への思いを断ち切ります。そこへこっそり娘を迎えに来た油屋のお常が久松への疑いが晴れたことから二人を大坂へ連れ帰ることになります。世間の手前、お染とお常は舟、久松は駕籠に乗り、早春の景色の中を去っていきました。
　見送るお光の心情はいかばかりでしょうか。


百姓久松　　渡邉　正
お　　光　　大川　信子
久　　松　　大竹　緑
お　　染　　山田　和枝

お染の伴
　およし　　西川由布子
お　　常　　秋本　令子

百姓女房
　おてふ　　大竹香奈美
　おなか　　野坂　清美

　　後見　　沖山恵美子　



二　「三人吉三（さんにんきちさ）」一幕　大川端庚申塚（おおかわばたこうしんづか）の場

　河竹黙阿弥白浪物の代表作です。
　節分の夜更け、美しい娘姿のお嬢吉三が、夜鷹のおとせの懐から百両を奪い取り、大川へ突き落してしまいます。その一部始終を見ていた御家人くずれのお坊吉三がお嬢を呼び止め、百両を巻き上げようとして二人は争いになります。そこへ通りがかった和尚吉三が間に割って入り争いを仲裁し、同じ吉三を名乗る縁から、三人は義兄弟の契りを結ぶのでした。
　「月もおぼろに白魚の、篝火も霞む春の空…」
　お嬢吉三の美しい七五調の台詞が心地よく響きます。


お嬢吉三　　水之江智子
お坊吉三　　石原　洋子
和尚吉三　　小倉　ルミ
夜鷹おとせ　北田　京子

金貸し
太郎右衛門　本間由美子

研　師
与久兵衛　　魚住有夏里

ツケ打ち後見　沖山恵美子



　演　　出　歌舞伎俳優　中村梅花
　所作指導　花柳翁麗
　大道具　　歌舞伎座舞台株式会社
　小道具　　藤浪小道具株式会社
　衣　　装　松竹衣装株式会社
　かつら　　宮川かつら
　床　　山　桑原　春男
　手話通訳　手話サークル　くすの木