第14回せんがわ劇場演劇コンクール受賞者インタビュー(3) 演出家賞 今野裕一郎(バストリオ)
以前、助成金についての面談で、何か賞がないと難しいと言われたことが頭に残っていました。その頃、役者の友人がコンクールに出たら良いと、全国の様々なコンクールのリンクを送ってくれて。それを制作の橋本さんと中條くんに伝えたところ、今年度だけはコンクールに応募しようということになり、いくつか候補の中から良さそうなところを絞って、せんがわ劇場演劇コンクールに応募しました。審査員に古川日出男さんがいらっしゃったのも魅力でした。
一回限りというのは慣れていましたが、さすがに制限時間は少なかったです。
普段一番大切にしてるところに制限かかっていました。劇場に入ってから作品のことを考えることが多いので。あらかじめ用意しないといけないんだな、と。上演台本や舞台図面の提出なども普段やっていませんでした。
台本というよりも、メモ書きのような感じです。台本の通りにやってほしいなんて全然思っていない、頭で作っていない感じなので。ただ、劇場側としては初めての団体で、台本が無いことに戸惑うところも当然あると思います。丁寧にコミュニケーションしてもらえて、ありがたかったですし楽しかったです。
いつもとあまり変わらなかったです。いざ劇場に入ったら、コンクールだということは考えてなかったです。お客さんに観せる、本番のことだけに集中していました。
結果発表の時は疲れ切っていて、ぼーっとしていました。講評の時にもう橋本さんが泣き出していて、ああいう風に言ってもらえると思っていなかったんだろうから、良かったなと思っていました。他の人に比べて、自分は賞に対してあまり分かっていなかったかもしれない。ただ、俳優賞は、橋本の名前を呼んでほしいと思っていました。抜群に良いし。そうしたら俳優賞は全員だと言われた。ということは橋本も俳優賞を獲ったんだよな、と実感しました。
俳優賞を獲って満足していました。橋本が感動していて、良かったなと。一旦トイレへ行って戻って来たら、演出家賞で呼ばれていました。
俳優賞を全員で獲ったことが嬉しかったので——やっぱりみんなが褒められて欲しいし、正直、演出家賞よりも全員が俳優賞を受賞したことの方が嬉しいです。全員良いと思ってやっていたので。
特にないです。まず人がいて、集まってから、今何に興味がある、何をやろうとなりますね。
セザンヌは、元々野外でやった作品で、それを今回やろうということになりました。ただ、メンバーもその時から増えて、作品としても全然違うものになっています。
クリエイションメンバーみんなと会って、一緒に時間を過ごしています。(インタビューした日の)昨日は東京の郊外の方を、長い時間散歩しました。福生辺りまで辿り着きました。それ(長く散歩すること)は2回目なんですけど、みんなのことを見ながら、ただただ一緒に歩いています。
昨日は予定してやりました。作品によって毎回作り方は違うのですが、今回は、ワークショップで集まって初めて参加する人たちもいるので、みんなのことを全然分からないから、みんなで一緒に歩きたいと思って。どれくらい体力あるんやろうとか、どんな歩き方するんやろうとか、知りたいですね。
そうですね、この人はどんな人なんだろうと。未だにバストリオメンバーにも分からない部分はあります。日々変わっていく。(作品の構成などを)全く考えてないというわけではないけど、自分の中のことだし、それを無理して全員に共有したいとは思わない。それが作品に入らなくても全然いいですし、次回に持ち越したり、一人で映像にしたりすればいい。めちゃくちゃ考えて、全部捨てて(メンバーに)会うということをしています。やっぱり僕にとって、一番大事なのは目の前にいる人なんです。
新しく参加する人は、(本当に作品に)なっていくのかな?と戸惑うかもしれないですね。何をやるのか決まっていくのはメンバーが集まってからです。最近は自分たちの上演を観たことがある人たちが応募してくれているので、信頼してくれて、(作品づくりを)始めることができていると感じます。心配そうな人も、一緒に過ごしていれば、充実した時間を過ごして不安はなくなっていく。でも本番のことを真面目に考えてくれている人ほど、心配するだろうなと思います。そういう人ってすごくいい人たちだから、あまり心配させたくないので、そういう時は早めに作品の先のことを話したりします。まあでも、時間がこちらに流れ込むのを待っていますね。(その人の)時間がこちらに流れ込んでこなかったら、こちらの力が足りないと思います。
いつも多いです。いつもバストリオの公演を観に来てくれる人がせんがわ劇場演劇コンクールも観に来ていて、いつも通りのバストリオでしたねと感想を言っていました。
大変です。毎回必ず物量は増えてしまうので、運び入れて、一回休憩して、と稽古場に搬入しています。でも物が少ないと嫌だし、物がある体(テイ)でやることは好きではない。道具を使ってみて、人や空間に起こる現象を知りたいです。ずっと同じ稽古場でクリエイションできることは憧れます。
座組によりますね。本番まで一度も全員が集まらない時もありました。
そもそも、バストリオには演劇人があまりいないんです。音楽ライブの感覚をみんなが持っていて、ちょうど良く共有ができています。そうやって肌が合うからこそ、ミュージシャンの人たちと一緒にやっているんだろうと思います。一台の車にメンバーみんなで乗ってツアー公演もやる。
8月は知床で芸術祭と公演もやります。そのあとも、まだ発表はされていませんが、秋に新作を発表する予定です。京都でやった後、東京でも上演します。
そうですね。面白いことをやりたいです。
インタビュー・文 一宮周平(第14回演劇コンクール運営チーム)